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心の病気は本当に今の時代に多いのでしょうか。一般に現代社会はストレスが多く、心の病気も多いと信じられていますが、果たして本当にそうなのでしょうか。
心の病気には、大きく分けると2種類あります。
心理的あるいは社会的ストレスよりも脳の変化が主な原因と考えられている
精神分裂病や躁うつ病など。
脳の変化よりも心理的あるいは社会的ストレスが主な原因と考えられている
適応障害や神経症あるいは心身症など。
これらの心の病気は、それぞれの時代において、その症状や現れ方が異なっていることは知られていますが、それら全体の発生頻度が増加したとは必ずしもいえないようなのです。
それぞれの時代には、それぞれの時代の心理的ストレスならびに社会的ストレスがあり、いつの時代にもその時々に生きる人々の不安や苦悩を反映した適応障害や神経症などがあったと思います。
農耕時代に生きた人々には、過重な年貢に不満を感じたり、狩猟や採集をしていた人々にとっては、その日の食料を得ることができるか。動物に襲われたりしないだろうか。という不安などがあったことは容易に想像できます。
そのことは、いつの時代にもどこの文化においても、精神的苦痛やストレスからもたらされる人間的苦悩が垣間見えてきます。それぞれの時代に生きる人々には、それぞれの心理的ストレスや社会的ストレスがあったのだと思います。
人間社会において普遍的ともいえる「ストレス」はどこからもたらされるのでしょうか。
さて、人間は次に述べるような欲求の充足が得られないとストレスを感じると考えられます。
マスローは、人間の欲求には5つの階層があり、人は低次のものから先に満たそうとする傾向があるとしています。 --->欲求不満とはを参照。
その5つの欲求の階層とは最も低次のものから、食欲などの「生理的欲求」を求め。「安全の欲求」の充足を求め。「愛と所属の欲求」の充足を求め。社会的な役割や地位など「承認の欲求」の充足を求め。最後にその心の成長の頂点として「自己実現の欲求」の充足を求める。としています。
これから見ると、狩猟と採集の時代には「生理的欲求」や「安全の欲求」をめぐるストレスが多かったでしょう。現代の日本では、幸にして「生理的欲求」と「安全の欲求」をめぐるストレスは少ないのですが、「承認の欲求」、「自己実現の欲求」をめぐるストレスが多い時代であるように思います。
このようにそれぞれの時代の人々は、それぞれの時代のストレスにさらされながら
不安と苦悩を負って生きてきたのであることが分かります。
ところで生理的欲求や安全の欲求には限度があり、
それらが充足されるとそれ以上の充足はまず必要ありません。
しかし、現代のストレスの基盤となっている「承認の欲求」や「自己実現の欲求」は、ある程度充足されると、さらにそれ以上の充足を求めるといった具合に、その充足には際限がない傾向があります。
人間の欲は無限といわれる所以ですね。
そのために、ストレスが持続しやすく現代において心身症が多いのは、このような持続的ストレスが関連しているのではないか。といわれています。
情報過多の今の時代を反映しているのだと思います。
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